味わい深い1枚ULTRA BLUE
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味わい深い1枚これは名作と言わざるを得ません。まずメッセージ性の強さに少しびっくりしました。サウンド的にも今までとは一味違う感じでなかにはとまどってしまう人もいるかもしれません。でもこれを聴けば彼女がただの商業主義ではないこと、歌を通して何かを伝えようとしてることがわかると思います。重い曲も何曲かあるもののクセになる1枚だと思います。
切なく、しかし生命力に溢れている。最近確かに涙脆くはなった。なったが。自然に泣いてしまった歌は久しぶりだ。歌詞だろうか曲調だろうか。いや、やはり全て良い。過去をリンクさせてとか泣かせる様な歌詞だから、では無く。本当にごく自然にするっと心の隙間に寄り添うような。そんな歌だから不覚にも涙を流してしまった。心の琴線に触れてしまった。「誰よりも幸せであってほしい悲しみは似合わないよ君の目に私を慈しむように遠い過去の夏の日のピアノがまだ鳴ってるのに」Making Loveより/宇多田ヒカル
彼女独特のエアポケット齢を重ねる毎に精神性が深まってきている宇多田作品ですが、その意味で今作の聴き所は後半に連ねるキャッチさを伴わない曲にみる趣深さでした。9「海路」などフラットな音型にこめられた心象をしなやかに鳴らす曲達。キャッチな曲は食いつきのよいメロディが先行しますが、こうしたキャッチさを狙わない曲ではその分だけ詞や音型に精神性を強く反映させられます。大人が楽しめる部分で中島みゆきらも使う表現ですし、他の若手女性歌手がなかなか表現してこないアーティスティックな領域が堪能できました。
その9のコンポジションは非常に儚く美しい魅力があります。淡々と続いてゆく音符一つ一つに乗せたことばが描く俯瞰した幻想は、この平坦な音型だからこそですし、内面的な影の表現が魅力の彼女ならではの世界・効用でした。わかりやすいだけの曲より、わかりにくい要素から聴き手の想像力が曲の姿を作りあげてゆく面白みです。こういうタッチはASKAや陽水、佐野ら先達の右脳と左脳を使う歌詞世界を思い出させます。
その9から音符が動き出す10「WINGS」への流れ方、更に川が海へ辿りつく様に感動的な11「Be My Last」が置かれたのは絶妙ですね。10はほぼ同じメロディを何度もループさせるのですが、これが奇妙な増幅感を呼びます。主題がコンポジションの力でゆっくりと舞い上がる体験がありました。11は表現者宇多田の魅力であり、又スターというのは皆そうですが、内面にどこか一箇所埋まらない溝の部分、ミッシング・ピースがあり、それを追い求める世界が表れたような儚い主題です。今作の流れの中で詞の発色がシングルより意義深くなっていました。12は間奏で13「Passion」へ。アルバム後半に漂っていた浮遊感を総括するようにポストロックの神秘的な曲想で時と心象が駆けてゆきます。この、詞のエアポケット感はただの失恋系ではない、彼女独特の空虚さがあるんです。ULTRA BLUE宇多田ヒカルULTRA BLUE
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宇多田ヒカル:デビュー当時から「メッセ」と呼ばれる日記を続けており、連作のイラストをアップしている。